リュウジアカデミー

魔女と魔法の歴史

魔女と魔法の歴史学

魔女や魔法がどのようにうまれ、そして発展していったのか…。一緒にその歴史を振り返ってみませんか?


■先史~ホモ・マギガの登場
魔術の歴史はおそらく、人類発祥と同時に始まります。当時の人々が遺した遺物からは、呪術的、魔術的な意味を持っていると考えられるものが見つかっているからです。
例えば、今から一万五千年ほど前に描かれたとされるフランスの「ラスコー洞窟壁画」は当時の呪術師たちが暗がりの中で得たヴジョン(幻視)を描き写したものと推測されます。日本の土偶も、魔術道具だったと考えるのが通説ですね。
この時代以降、人類は「ホモ・サピエンス(知の人)」などと呼ばれますが、僕は「ホモ・マギカ(魔術の人)」と呼んでもいいのではないかと常々思っています。なぜならその頃発展し始めた「知」は、決して「道具を使う」、「火を起こす」といった「合理性を追求する」ものばかりではなかったから。
「絵や字を描く」「物を作る」といった行為で、人や現象、環境に影響を与えようとする…そんな現代のまじないにも通ずる魔術的な「知」も数多く存在したのです。

■古代~魔術と宗教の混在が始まる
古代に入ると、魔術は世界中のどの文明においても重要な役割を果たすことになりました。記録を追っていくと、特に宗教と密接な関係をもっていたことがわかります。
バビロニアやエジプトでは、神官たちがいけにえを捧げたり、呪文を唱えるといった儀式によって、神々を動かそうとした記録が残っています。
インドでは『ヴェーダ』(バラモン教の聖典)の中に記載されていた呪文などの魔術的要素がヨーガと融合して、仏教の中野密教的要素へと発展していきました。
またギリシャでは、紙の前身である「パピルス」に残された護符や呪文が、後に広まるキリスト教やエジプトの魔術と結びつき、やがて『ヘルメス文書』という有名な一群の魔術テキストとして残されるようになったのです。
少し話がそれますが、現代の“Magic(魔法)”という言葉の語源は、新約聖書にも登場する“Magi”。つまり、イエス・キリストの生誕を予告した東方の魔術師や占星術の博士のことだというのですから、その縁の深さがよくわかるのではないでしょうか。

■中世~暗黒時代とその終焉
ひと昔前の歴史学において、中世は「暗黒時代(ダークエイジ)」と呼ばれていました。ローマ帝国が衰退し、異民族の侵略を受けたことにより、文化や技術の停滞が起こったからです。その上、この時期に強力な力をつけたキリスト教は、魔術を「異教」、「悪魔の術」として次々と排除していきました。
民間レベルでの魔術は盛んだったはずですが、後世のための資料があまり残されていないということもあり、実情はよくわかっていません。おそらく、キリスト教とそれ以前の異教が混じり合ったような魔術が密かに実践されていたのでしょう。片や教会でも現代からすると「魔術」としかいいようのない祈祷や悪魔払いが行われていたはずですが。
中世後期に入った頃、イスラム圏との交流が始まったことで、暗黒時代はようやく終焉の兆しを見せ始めます。哲人によって魔術の理論がつくられ、ユダヤ神秘思想のカバラが形を成し、アラビア起源の魔術書『ピカトリクス』が翻訳される…。この時期に築かれた土台により、やがて訪れるルネサンス時代、西ヨーロッパでは魔術文化が花開く流れが生まれたのです。

■ルネサンス~魔術復興の時代
「神と教会の意思」が絶対の中世とは対照的に、ルネサンスは「人間の意思」によって物事を考えられる「明るい理性と自由の時代」だったといわれています。そのためこの時代には、これまで人知が及ばないとされていた自然の秘密をも解き明かそうと、多くの知識人が魔術や占星術を学び、広めていったのです。

15世紀、フィレンツェで活躍した哲学者のマルシリオ・フィチーノという人物は、哲学者であり司祭、医師にして音楽家、そして占星術師で魔術師でした。メディチ家の庇護を受けた彼は、プラトンとともに『ヘルメス文書』をラテン語訳し、再び西洋に紹介。キリスト教と古代の魔術思想を融合させ、西洋の秘教を再興させます。また16世紀にはコーネリウス・アグリッパという人物が『オカルト哲学』を著し、魔術思想の集大成を行いました。
これらの魔術の思想は、様々な芸術にも影響をもたらしています。その証拠に、ルネサンスの名がと呼ばれるものの多くは、占星術や魔術の知識を抜きにしては語れません。しかしそんな魔術復興の時代も、啓蒙主義と科学の発達により、いったん幕を閉じることになるのです。

■近現代~魔術は自由を手に入れた
次に西洋魔術が復興したのは、18世紀末頃。そこからは着実に、歴史に埋もれていた魔術伝統を掘り起こし、現代的に発展させていく作業が続いていきました。
19世紀になると「近代魔術の『父』」と呼ばれるエリファス・レヴィが登場。『高等魔術の教義と祭儀』という本を著します。
19世紀末には、パリとロンドンで同時期に「魔術結社(魔術を愛好する人々が集まり結成した組織)」が誕生。特にロンドンの魔術結社「黄金の夜明け団」は、様々な芸術家や神秘研究家が集い、サロン状態になりました。
そして20世紀、イギリスのジェラルド・ガードナーが、古くから伝わる自然崇拝の魔術-「魔女術」を復興。世界中の「魔術」を愛する人の間で大きなムーブメントとなったのです。
今や「魔術」は、大学レベルの学術機関でも堂々と研究できる対象です。あらゆるしがらみや思惑から解き放たれ、魔術は自由を手に入れました。
今後、魔術がどのように発展し、さらなる広がりをみせていくのか…それは僕にもわかりません。ぜひ皆で一緒に見守っていこうじゃありませんか。